カナダの安全法規
カナダに製品を出荷するために必要となる製品安全に関する法規について見ていきましょう。
アメリカと同様、カナダについても法体系から順を追って説明していきたいと思います。
少し長くなりますが、お付き合いください。
【目次】
3-1. カナダ労働法CLC(Canada Labour Code)
3-2. カナダ労働安全衛生規則 COHSR(Canada Occupational Health and Safety Regulations)
4-2. (2) 現地の労働安全衛生検査官AHJによるフィールド評価
5. (2)CSAモデルコード「SPE-1000」が適用される製品
1. カナダの製品安全に関する法律
カナダの製品安全についても、アメリカと同じく、欧州(EU)のようにCEマーキングのような制度ではなく、連邦法や州法を基にして定められた製品安全規制に従うことになります。
カナダは、10の州と3つの準州で構成された国で、カナダの法律もアメリカと同じく、イギリスの法体系(コモンロー)にルーツを持っています。
*10の州(オンタリオ、ブリティッシュコロンビア、アルバータ、ケベック、サスカチュワン、マニトバ、ノバスコシア、ニューブランズウィック、プリンスエドワードアイランド、ニューファンドランド・ラブラドール)
*3つの準州(ノースウエスト、ユーコン、ヌナブト)
アメリカと同じく、州ごとにある程度の独立性がありますので、「連邦法」と「州法」の2元性を持っています。
それでは、カナダの法体系について、見ていきましょう。
2. カナダの法体系
まず、カナダの最高法位として位置づけられるのが、「カナダ憲法」です。
カナダ憲法に基づき、立法権は連邦政府と州政府が持っております。
また、州の権限はカナダ憲法によって規定されていますが、準州の権限は連邦法によって規定されています。
カナダもアメリカと同じく、「連邦法」と「州法」があり、連邦政府と州政府が運用しております。
知っておきたい法体系として、まず、カナダ憲法の下に制定されている「連邦法(Act)」があります。
そして、その連邦法(Act)を実現させるための法律として、「連邦規則(Regulations)」があり、「規格(Standards)」が存在するという構図です。
3. カナダの製品安全
カナダの法体系としては、カナダ連邦法(Act)に基づき、カナダ連邦規則(Regulation)、規格(Standard)があるということをベースに考えて頂き、次に製品安全に関する法律をみていきましょう。
カナダの製品安全については、まず、カナダ連邦法(Act)では「カナダ労働法CLC(Canada Labour Code)」が定められています。
3-1. カナダ労働法CLC(Canada Labour Code)
カナダ労働法CLCは、Part1~Part4で構成されており、Part1では「労使関係」について、Part2では「職場の労働安全」、Part3では「雇用基準(標準労働時間、賃金、休日など)」、Part4では「課徴金」について取り扱っており、製品安全に関する部分はPart2の「職場の労働安全」で取り扱われております。
Part | タイトル |
---|---|
1 | 労使関係(Industrial Relations) |
2 | 職場の労働安全(Occupational Health and Safety) |
3 | 標準時間、賃金、休暇、休日(Standard Hours, Wages, Vacations and Holidays) |
4 | 課徴金(Administrative Monetary Penalties) |
Part2の「職場の労働安全」の中にある第124項「雇用主の義務」では、雇用主は全従業員を対象にして、職場の安全衛生が保護されていることに責任を持たなければならず、また、第126項「従業員の義務」では、従業員は安全衛生に対する指示に従わなければならないことになっております。
このように、カナダもアメリカと同じく、電気機器や産業機械などを扱う事業者に対し、安全で衛生的な職場環境を作るための責務を定めており、カナダ労働安全衛生センター CCOHS(Canadian Centre for Occupational Health and Safety)が職場の安全衛生に関する取締りを行っております。
3-2. カナダ労働安全衛生規則 COHSR(Canada Occupational Health and Safety Regulations)
そして、このカナダ労働法CLCを実施するための法律として、「カナダ労働安全衛生規則 COHSR(Canada Occupational Health and Safety Regulations)」が定められております。
カナダ労働安全衛生法COHSRは、下記のようにPart1~20で構成されています。
Part | 内容 | Part | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 一般規定 | 11 | 閉所 |
2 | 建設物の構造 | 12 | 保護装置及びその他の予防措置 |
3 | 一時的構造物、発掘 | 13 | 工具、機械 |
4 | エレベーター(昇降装置) | 14 | マテリアルハンドリング |
5 | ボイラー、圧力容器 | 15 | 危険事象の調査、記録、報告 |
6 | 照明 | 16 | 応急処置 |
7 | 騒音レベル | 17 | 職場の安全確保 |
8 | 電気安全 | 18 | 潜水操作 |
9 | 衛生 | 19 | 危険防止プログラム |
10 | 有害物質 | 20 | 職場での暴力の防止 |
例えば、電気を使用している製品の場合は、Part8「電気安全」に従います。
4. CSA規格「CSA C22.1」
電気安全に対する要求では、Canadian Electrical Codeと呼ばれる「CSA規格C22.1」に従い、確認していくことが必要となります。
CSA規格のC22.1では、電気製品は、本規格の付属書AにリストされたCSA規格の承認を受ける必要があるとされています。
承認は、下記の2つの方法によるものとされております。
4-1. (1) 認証機関によるCSA規格等を用いた認証
一つ目の承認を受ける方法は、アメリカのNRTL制度と同じく、CSA規格等を用いた製品評価を認証機関で受けて、認証してもらう方法です。
(1) カナダ規格審議会 SCC(Standards Council of Canada)が認めた認証機関によって関連するCSA規格、またはCSA規格が存在しない場合は、その他規格を用いて認証を受ける。
4-2. (2) 現地の労働安全衛生検査官AHJによるフィールド評価
二つ目の承認を受ける方法は、アメリカのフィールドエヴァリュエーションと同じく、SPE-1000という規格を用いたフィールド評価を受けて、認証してもらう方法になります。
(2) 規制当局の要求を満足する。
これは、州及び準州が管轄するAHJ(Authority Having Jurisdiction)当局によるCSAモデルコード SPE-1000に準拠したフィールド評価を行い、承認されることを指しています。
つまり、(1)でCSA規格や関連規格による認証を受けることが優先されますが、現場設置されるような大型機械などの場合は、(2)のAHJによる認証を受けることになります。
5. (2)CSAモデルコード「SPE-1000」が適用される製品
カナダ向けの産業機械では、SPE-1000が適用されます。
CSAモデルコードSPE-1000の適用範囲として、下記のような製品が該当することになります。
a) 特定用途向けのカスタム機器
b) 連続的に生産されない機器
c) 年間500台以下の生産数
d) 通常の認証プロセスが適用できない機器
e) 現場に据え付けられた機器でAHJによる承認が必要な機器
f) 評価プロセス中に全ての評価試験が実施可能な完全なシステム、またはサブアッセンブリ
このようなフィールド評価の対象となる製品は、主に産業機械などで年間出荷台数が500台以下のものになります。
6. まとめ
このようにカナダもアメリカと同じく、製品安全としては、カナダの事業者に対し、労働安全衛生に対する責任が課せられております。
製造者側よりもそれを使用する事業者側が安全に対して責任を持つことを重視している形になりますが、製品の安全性に対する欠陥が原因で事故が生じた場合、事業者側の安全衛生に対する対応はもちろん、製造者側に対しても製品の安全性についても問われることになるでしょう。
アメリカ、カナダの法律は、コモンローというイギリス式であり、過去の判例を中心に裁かれますので、製造者側でも安全性については、しっかり取り組んでおくことをお勧め致します。
7. カナダの製品安全規格に対応するためには
イーエムテクノロジーでは、カナダ向け機械製品の規格適合のためのコンサルティング、カナダ現地で行われるAHJによる立会い認証、「SPE-1000」フィールド評価の手続きなどのサービス行っております。
北米(アメリカ、カナダ)向け機械製品の規格適合、現地フィールド評価認証など、お気軽にご相談いただければと思います。
関連ページ「NFPA79,UL508A,CSA C22.1,SPE-1000等の適合支援」
関連ページ「フィールドラベル NFPA790/NFPA791」
関連ページ「FCC Part15, FCC Part18 測定サービス」
関連ページ「アメリカの安全規格(OSHA、UL、NFPA等)」